くちばしコンサルティング

人事や経営を学べるブログ。中小企業診断士・人事コンサルタント山本遼が書いています。

「成果に報酬を設定しても、成果が向上しない」ということが起る理由

「最近の若者は、金銭に対する報酬の感度が低い」とよく言われます。その理由に「生まれてからお金に困ってこなかったからハングリー精神が無いんだわ」と。
しかし、ハングリー精神があろうと無かろうと、成果に対する報酬に反応しないケースがあります。
 

 

テストで良い結果を取ればご褒美をあげる と言ったのに

ハーバード大学のフライヤー教授が行なった実験に、以下の二つを比較したものがあります。
「成績が上がればご褒美をあげる(アウトプットに対してインセンティブを設定)」
「本を読んだらご褒美をあげる(インプットに対してインセンティブを設定)」 

 

どちらが成績を上げることが出来たか、というものです。
 
結果はなんと以下のようになりました。
・インプットに対してご褒美を設定した子の方が、アウトプット(テストの点数)が高まった。
・アウトプットに対してご褒美を設定した組は、アウトプットの成果は高まらなかった。

 

普通に考えれば、成績を上げればご褒美がもらえるなら、モチベーションは高まるはずです。しかし、アウトプットにインセンティブを与えられた子たちは、「やる気はあるが、どうすれば成績が上がるか」が判らなかったから、行動に繋がらずアウトプットは向上しなかったのです。
 
一方で、インプットに対してご褒美を与えられた子達は、何をするべきかが明確になったので、本を読むという行動に繋がりました。それが、成績向上に繋がったのです。
 
このように、相手が「どうやればそれが実現できるか」を考えられなければインセンティブは効果を発揮しません。インセンティブが有効になるのは自分たちが何をやれば良いかが明確なときだけということが言えます。
 
これは、ブルームという人がが期待理論として以下のように示しています。
モチベーション = 報酬の魅力 × 努力が報酬に結びつく確率
 
報酬が魅力的でなければモチベーションに繋がらないし、どれだけ報酬が魅力的でも達成の仕方が判らなければモチベーションにつながらない、ということです。
 
先ほどの例では、子供達が「努力の仕方を知らない」からモチベーションに繋がらなかったわけです。
 

では、インプット目標を設定するべきなのか?

先ほどの例では、成果の出し方が判らなかったため折角のインセンティブが効果を発揮出来ていませんでした。であれば、インプットに目標を設定するべきでしょうか。しかし、インプットに目標を設定するのはいささか現実的ではない気がします。そこで、先ほどの実験の続きの部分が参考になります。
アウトプットに対してご褒美を設定した組に対して、チューターとして先生や先輩をつけ、彼らから「成績を伸ばすためには本を読むと良いよ」ということを指導させた場合、成績が向上した 

 

つまり、「実現の為に何をするべきか」が明確になったのでモチベーションにつながったということです。

 

実際の企業の現場では?

さて、ここまでは子供のインセンティブの話をしましたが、実際の企業の現場ではいかがでしょうか。
例えば、受注○億円達成ならインセンティブ△円というような設定をしている企業は多いです。しかし、従業員はどうすれば○億円達成できるかきちんと理解出来ていますか? 
インセンティブが有効なのは自分たちが何をやれば良いかが明確なときだけなので、従業員が行動レベルで理解出来ていなければモチベーションに繋がっていない可能性があります。
 
 また、一般的には生産部門には受注額はコントロールし得ません。そのため、生産部門にとって受注○億円はモチベーションの源泉にはならないわけです。となると、生産部門に対して売上高を目標に課してもモチベーションは上がらないと言えます。無理矢理上げるとすれば、受注が増えたことによる繁忙感に対する不満が減るぐらいでしょうか。
 
皆さんの会社では、従業員に課せられた成果目標は従業員のコントロール可能な範囲にあるでしょうか?なければ、それはモチベーション向上に繋がっていない可能性が非常に高いです。 一度、確認してみることをお勧めします。
以下のような回答が多くて、結構びっくりすると思いますよ。
・どうやれば達成できるか知らない
・自分たちの範囲外の所まで目標に含まれている
・そもそも目標を知らない 

 

 

今日のまとめ

・成果に報酬を設定するなら、部下が達成の為の方法を理解して実践できる必要がある。
・部下が達成の為の方法を知らないなら、どうすれば良いかを伝えてあげる。