くちばしコンサルティング

人事や経営を学べるブログ。中小企業診断士・人事コンサルタント山本遼が書いています。

無能な上司が生まれる理由。それは「出来る人を昇格させる」から

将来、全役職者は無能で埋め尽くされるという、“ピーターの法則”というのがあります。

1. 能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。したがって、有能な平(ひら)構成員は、無能な中間管理職になる。
2. 時が経つにつれて、人間はみな出世していく。無能な平構成員は、そのまま平構成員の地位に落ち着く。また、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は、無能な人間で埋め尽くされる。
3. その組織の仕事は、まだ出世の余地のある人間によって遂行される。
(2018/11/09時点のwikipediaより) 

 


つまり、中間管理職は全員その等級に照らせば無能だという状態が起きる。だから全役職者は無能だということです。(課長として有能な人は部長にあがっているはずだから。)まぁ、現実的には無能じゃない人がいるかもしれませんが、それは今から無能になる人なんだけど、いまは昇格していないから無能だと認知されていないということなだけです。

 

これは本当に多くの会社で見られます。そして、不幸な取り扱いがされるわけです。例えば以下のような感じです。

 

・部長にあげた人が部長には不適当だったから課長(あるいは担当部長とか)に降格させたら、ふて腐れて現場で持て余す
・有能な人も、昇進させると無能になるかもしれないから、昇進判断をかなり慎重に行なうようになり、早期抜擢が阻害される。
・プレーヤーとしては有能な人が管理職になったが、管理職の適性がないためチームはぐちゃぐちゃになった 

 

皆さんの会社でも居るんじゃないでしょうか?

 

しかしなんでこんな不幸なことが起こるのでしょうか。

 

 

昇格条件が「今、有能な人を昇格させる」ようになっているから問題

答えは、昇格条件が「今、有能な人を昇格させる」ようになっているからです。 具体的には、年間の評価をABCDEの5段階でやっている会社で、「3年以上連続Aならば昇格とする」とか、A=5点・B=4点・・・として、「3年平均4.2以上で昇格とする」とかしているような例です。こういう、「今の等級の評価基準で一定以上の水準を超えたら昇格」とするような昇格基準のことを”卒業基準”と言います。 「お前は係長卒業!来年度から課長な!」というものです。

 

一方で、卒業基準とは別の考え方もあります。「お前は課長に相応しいから課長にする」という考え方です。具体的には課長になれそうなひとを昇格させるというやり方です。こっちを”入学基準”と言います。

 

みなさんの会社が昇格を卒業か入学のどちらで考えているかは、人事考課規程とか人事考課の手引きみたいなやつを見ると判ります。

 

ここまでをまとめると:

上の等級でやっていけそうだと判断したから昇格させる→入学基準


下の等級で上手くやれた(昔~今まで評価が良かった)と判断したから昇格させる→卒業基準

 

学校の入学卒業と同じですね。高校生を上手くやれたから高校卒業。大学生になれそうだから大学入学。
学校で喩えると、卒業と入学はイコールじゃないということが判るとおもいます。「あれ?浪人生も居るよね?」と。

 

卒業基準が問題なわけ

卒業基準で昇格を決定すると、上位に相応しくない人が昇格することがあります。 名プレーヤーは名監督にあらずってやつです。社長に相応しいからと言って課長に相応しいわけじゃないです。同様に、課長に相応しいからと言ってプレーヤーに相応しいわけではないです。なのに、プレーヤーが上手く出来たから課長とかしてしまうから無能な管理職が生まれてしまうわけです。

 

また、スケジュールや予算管理、バランス感覚に長けていて管理職に相応しいのに、押しが弱くて営業成績が振るわないみたいな人が管理職に上がる可能性を取りこぼしてしまうことも起きます。

 

卒業基準の別の弊害

また、さっきの「3年以上連続Aならば昇格とする」とか、A=5点・B=4点・・・として、「3年平均4.2以上で昇格とする」とかしているような例では、別な弊害も出ます。 それは、人事考課の逆算化が起きる ということです。
あの人を昇格させたいけど、3年連続Aを取らせないと昇格出来ないからあいつはA評価以外つけない とかそういう訳のわかんないことが起きるんですね。そうなると、「俺は成果を出しているのに評価されない」とかいって名プレーヤーが不満を持つ。人事考課ってなんなんだって話になりかねないということです。

また、出産や育児なんかでお休みされる女性の方の昇格が遅れるのも卒業基準が影響だったりします。(休んでいるから自動的に最低評価、みたいな運用がされることで、平均評定が下がり昇格が遅れる。少しマシな会社では、”産育休中は分母にも分子にも含まない”みたいなことをしているケースもありますが、復帰後すぐの昇格は現実的にあまりされないですよね)

 

入学基準は万能なの?

じゃあ入学基準は万能なのかって話ですが、入学基準も万能じゃないです。上位職位をやる前から上位職位に相応しいかどうかは判らないので、判断が難しいわけです。また、現在のレベルにとって十分な能力が発揮されていない人が昇格することがあるので、周りからの納得感が低い可能性があります。「なんでアイツが」みたいなことです。

 

ただ、それでもやっぱり入学基準による判断は必要です。みんながみんな宮本恒靖監督とか、ストイコビッチ監督みたいに選手時代も凄いけど監督としても凄い、みたいなことなら全然問題ないわけですが、求められる資質が違うので社会人ではこうはなりません。

 

学校だと、だいたい中学の指導要領から高校は入学試験を作るので、ほぼ成績の良い中学生=高校生になれる ということも起きますが、高校→大学となると少し話は変わってきます。 それ以上に、一般社員→管理職→経営層というのは役割や適性が大きく異なるからです。

 

結局どうすべきか

上司が部下から信頼を得るためには、5つのパワーが必要だとする学説があります。 
5つのパワーは、報酬 強制 正当 準拠 専門能力で、それぞれ以下の通りです。

・報酬勢力:部下に金銭的な報酬や昇格昇進、賞賛を与える能力(アメを与えるということ)
・強制勢力:部下が上司に従わなければ、叱責や減給・解雇・左遷などの罰を受けるのではないかと予想させる能力。(ムチ)
・正当勢力:リーダーは影響力を行使する正当な権利を持っている為、自分は従わなければならないと思わせる能力。
・準拠勢力:リーダーに対する個人的な魅力や一体感を感じさせる能力
・専門勢力:上司の方が部下より知識や能力において優れていると感じさせる能力

つまり、組織管理をするためにはある程度の専門能力がないと組織の方向性を決定することが出来ません。プログラムを書けなくっても「プログラムで何が出来るか」とか、「どれぐらいの市場価値があるか」「作るのにどれぐらい掛かるものなのか」とかが判る必要はあるということです。

 

だから、最終的には卒業基準+入学基準で考えていくのがいいと思います。具体的には卒業基準を今までより低くして間口を広げるって感じですね。

 

例えば

「単年度でC以上の人であり、かつ上司の推薦があれば、上位等級の要件に照らして、人事部で昇進判断を行なう」 

 みたいなやり方です。

 

どの程度にするのが妥当か?ということは判断が難しいので、詳しいコンサルとかに聞けばいいと思います。

 

 

今日のまとめ

・無能な上司が生まれるのは卒業基準による昇格を行なうことが影響
・上位の職種に相応しいか?で判断する入学基準が必須
・卒業基準+入学基準の合わせ技が妥当

 

中小企業診断士・人事コンサルタント 山本遼