くちばしコンサルティング

経営戦略を実現する、運用しやすい人事制度構築が得意です。

「定性的な目標は達成基準を書きづらい」という管理職の悩みに対してどう答えるか

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「君たちはどう評価するか~悩みボヤく管理職に逆質問で気づきを促す、評価制度の運用想定問答集~」(2018.06~2018.11号連載)

 

月刊人事マネジメント 2018.06月号

 

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 人事制度の運用はマネジメントの本質です。しかし、人事制度を運用していると、現場管理職からは人事制度の運用について不満が数多く寄せられます。人事担当者からすれば、「ルール通り運用してくださいよ。他の人はやってくれているじゃないですか。」と言いたくなることもしばしばではないでしょうか。
 仮に、言われるがまま対症療法的に運用を変えると、別の問題が生じることがあります。逆に無理矢理押さえつけても問題が解決しないばかりか禍根を残します。
生まれながらの管理職は居ません。現場から出てくる不満(以下、建設的に考えるために“相談”と記載することにします)に対し、マネジメントの本質に気づける回答をすることで、彼らの理解を促進して、おまけに育ててしまうことができます。
 この連載では、人事制度を変えることなく、運用面での理解を促進することで、評価者である管理職を成長させる回答方法を提案していきます。

 

「定量的な目標はまだしも、定性的な目標は達成基準を書きづらいんだけど」

 これは目標管理制度のある企業の人事担当者なら誰もがされたことのある相談でしょう。確かに受注量や歩留まり率など、数値化された目標は達成判断基準がわかりやすいです。そのため「何らかのKPIを設定して数値化しましょう」と言いたくなることもありますが、無理矢理定量化してしまうと、目標のための目標にすり替わってしまう恐れがあります。また、研究開発や人事制度変革など、どうしても数値化にそぐわない仕事も存在します。では、こうした相談に対してどう回答していけば良いのでしょうか。

 

 相談者はどんな状態にあるのか?

 相談を受けたときにまずするべきことは、相手の現状把握です。このケースの場合、相談者は「定性的な目標は達成できたかどうかの判断が難しい」と感じています。つまり、相談者の現状は「数値化出来ない目標に対しては、”いつまでに・何を・どこまでやればよいか”のゴールが明確に出来ていない」と考えられます。あるいは、そもそも仕事を達成するということがどういう状態を指すのか判っていない可能性があります。

 

 目標設定において管理職が目指すべき状態とは

 次に、目標設定において管理職が目指すべき状態を考えます。数字のあるなし、定型か非定型かに関わらず、どんな業務であっても「あるべき姿」を設定し、現状とのギャップをなくすための施策を完遂することが求められます。そもそも、目標を数値で表すことが出来るかどうかは関係が無いわけです。
 「いかなる目標であっても、到達基準とスケジュールを明確に定めている」ことが管理職としてあるべき状態であると言えます。
 例えば、「来年度から新人事制度が運用出来るようになっている」「経費支払い処理が3日以内に完了出来ている」といった目標も、「年度末までに売上高○億円を達成する」のような目標も、”いつまでに・何を・どこまでやればよいか”を設定しているという点で違いはありません。

 

 問題解決の為の方向性

 到達基準とスケジュールを明確にするためには、「期限+状態表現」の表現で記載することがポイントです。状態表現とは、「~している」「できている」など、「~ている」で終わる文章であると考えるとわかりやすくなります。
 また、到達基準を表現する際に、ビッグワードを使わないことが重要です。ビッグワードとは、もっともらしいが意味を持たない抽象的な語のことです。
 例えば、「できるだけ早く」「良い製品」などです。「できるだけ早く」とはいつまでか、どういった状態になれば「良い製品」と言えるのかは、人によって認識が異なってしまうためです。
 ビッグワードを使うと、ゴールが曖昧になってしまうため、部下が必要以上に時間を掛けてしまったり、逆に部下が出来たと思った水準が、上司からすると物足りないと感じたりしてしまいます。

 

 考課者への具体的な質問例

 では、実際にどんな質問を投げかければ考課者をあるべき姿に導くことができるのでしょうか。ここからは、人事担当者から相談者に対する問い掛けの例をご紹介します。

あるべき姿を明確にさせる質問例

①具体的にどのような目標を立てているのですか?
②それは、いつまでにどのような状態になっていれば達成だとお考えですか?
③目標達成までのマイルストーンはどのようなものを想定されていますか?
④その認識を、部下と共有していますか? 

 ①は、考課者と人事担当者との間で問題を認識するための質問です。そして考課者が考えていることを整理するために、②③のような問いを投げかけることで考課者の中に漠然として存在していた「あるべき姿」を具体化・言語化していきます。そして④を問いかけることで、具体化した目標を部下と共有することを促します。

 あるべき姿を明確にするための質問への回答で、相談者からビッグワードが出て来たら、以下のような問い掛けをしましょう。

抽象的な語に気付かせる質問例

・○○というのは具体的にどういう状態を想定されていますか?
・○○というのは、××ということですか? 

  例えば、「コミュニケーション能力を身に付ける、というのは相手の言ったことを理解するということですか?」などです。敢えて間違った、出来れば一部しか押さえられていない認識で問いかけると、更に有効になります。
 こう問いかけて、相談者から「コミュニケーションには、相手の言うことを理解するということも含まれるけど、私は”相手に伝える”ことを頑張って欲しいんだよね。」といった回答がでてくれば「なるほど。”コミュニケーション”といっても、人によって認識が違うことがありますね。」と言うことで、相談者が、同じ言葉でも他者と認識が異なることがあると気付くきっかけを与えることができます。

 

 おわりに

 目標管理をはじめとした人事制度は、上手く使えば現場管理職のマネジメント能力を引き上げることが出来ます。そして、現場管理職からの相談は、現場の現状を把握する良い機会になります。次回は、挑戦的な目標設定が出来ない、という相談について考えます。

 

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PDFは以下よりご覧ください。

https://drive.google.com/open?id=1EV77x3Oaq-bQfpUXqXpnHcTWjNWi1CD3

 

本記事は月刊人事マネジメント様との契約に従い、発刊後1ヶ月経過したため公開しているものです。