くちばしコンサルティング

人事や経営を学べるブログ。中小企業診断士・人事コンサルタント山本遼が書いています。

人事制度とは何か?

前回は、組織目標を達成するために各機能別戦略(ヒト・モノ・カネ・情報)の整合性を取ろうという話をしました。

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そして、「人事戦略は、モノ・カネ・情報等の戦略を下支えする戦略だ」と言う風に位置づけました。
具体的には販売戦略や調達戦略、知的財産戦略などを実現するために「どういう人が何人居れば実現できるのか」ということを考えることになります。要するに人の質と量を考えようということです。

 

人事制度は人事戦略に基づいた指針

 

ヒトの量を増やすには?

量を確保するということについて考えるのは簡単です。(出来るかどうかは別として)たくさん人を採用してきて、辞めさせないようにすれば良いと言うことになります。

 

ヒトの質を高めるには?

では、質についてはどうでしょうか?質を上げるためには研修という方法が思い浮かびやすいですが、集合研修以外にも自主的に学ぶ機会を与えたり、自身で学習することを促したり、モチベーションを高めたりと言うことも質の向上に役立ちそうです。
しかし、そもそも「どういう能力をつけて欲しいのか」を明らかにしていないと従業員の学習モチベーションが空回りしてしまうことになりかねません。企業がITシステムのプロジェクトマネジメントの出来る人材を欲しているにもかかわらず、それを明言しなかったらどうなるか。流石にボールペン字とか色彩検定を学ぶなんてことはしないでしょうが、難しいプログラムを書けるようになるとか、ハードウェアの知識は誰にも負けない人になるとかのズレはよく生じます。
東京から大阪に行きたいのに、東北新幹線に乗るような回り道をしてしまいかねないわけです。どれだけ早く進むことが出来たって到着しませんよね。

戦略を立ててもどのように進むかを具体的に落し込んでいかなければ投入した労力は空回りに終わるわけです。

そこで、その指針として人事制度に落し込むわけです。

 

 

人事制度の全体像


人事制度は、等級制度・評価制度・報酬制度の3つの制度から成ります。

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 中でも、等級制度は評価制度と報酬制度の根幹になります。求める人物像は得てして簡単に実現できるものではないので、途中にチェックポイントを設定していくようなイメージです。サッカーを始めたばかりの子供が「日本代表に入りたい」と思っても、道のりが遠すぎて何から手をつけたら良いかがわかりません。なので、○○少年サッカー団に入ってレギュラーを取る・ガンバのジュニアユースに入る・ユースに上がる・プロ入りする・・・というようなルートを設定してあげるようなイメージです。
 
 そして、各チェックポイント(各等級)に居る人に幾ら払うのかを決めるのが報酬制度であり、各等級の中でどんな能力を伸ばすべきかと言うことを示すのが評価制度です。

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 また、各等級に対して求める能力は実務や従業員の自学自習だけでカバー出来ないケースも出て来ます。例えば営業社員や研究開発の社員だと会社の経理的な知識が無くても普段の仕事が出来てしまったりします。しかし、将来会社全体のことを把握しながら販売戦略や研究開発戦略を立てて欲しいとするならば、会計の知識は必須になります。
 そのため、カバー出来ないスキルを育成するための制度として教育制度があるわけです。逆に言うなら、ほっといても従業員が通常業務の中で求めるレベルを獲得出来るようなスキルや、企業にとって必要の無いスキルをわざわざ制度化して教え込む必要は無いわけです。

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次回は「良い制度・悪い制度」について考えてみます。

経営戦略と人事戦略の関連

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本記事は上記連載の第一回です。

 

 企業は将来ありたい姿に近づけていくために日々の活動をしています。例えば、売上を今の倍にしたいとか、数十年後もこの企業として生存し続けているとか。

 成長するにせよ・現状維持をするにせよ、同業他社との競争に成功する必要があります。「競争に成功するために個別企業が持つセオリー*」を経営戦略と言います。

 *ジェイBバーニーが企業戦略論で行なった定義

 そして、競争に成功するために、経営資源(ヒトやモノやカネや情報)をどう使っていくか、ということを考えているわけです。それぞれの戦略のことを機能戦略と言ったりします。

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機能戦略の中の人事制度の位置づけ

機能戦略の例

 例えば、モノだと「良い物を作るために資材をどうやって調達するか」「調達したモノをどうやって作るか」「どうやって販売するか」ということになります。
 カネなら、資金をどうやって調達するか(自己調達?借入?)ということになります。情報なら、研究開発をするとか、情報を買ってくるとかいうことになるわけです。
 これらと並んで、敢えて表現を選ばずに言いますが「ヒトをどうやって調達し、どうやって活用するか」を考えるのが人事戦略です。

 

機能戦略の整合性が重要

 当たり前ですが、ヒト・モノ・カネ・情報の各機能戦略の整合性が取れていることが望ましいです。
 例えば、「多少高くても良い物を売る」と考えていてもそのための材料を買ってこれなかったら計画倒れに終わります。

 また、「研究開発をするぞ」と思っていても、研究開発に必要な資金を調達できないと意味がありません。

  株主への配当を厚くする、と考えていても、販売戦略が出来ていなければ実現できません。

 このように、「各機能戦略間の整合性が取れていないと効果が得られない」というのはモノとカネと情報のところでなら割と理解はしやすいです。

 しかし、ヒトに関する戦略の部分はかなり曖昧になりやすいです。

 

人事戦略の整合性が取れていない場合とは?

 人事戦略と他の戦略が取れていないケースは以下のような場合です。
 自社は研究開発に力を入れていきたいと考えているのに、研究者を冷遇するような人事戦略を採ってしまっている。(例えば管理職にならないと給与は600万円が上限とか)
 新規顧客開拓をしていきたいと考えているのに、新規顧客開拓を促さないような評価体系になっていない。(単年度の売上で評価するため、新規顧客開拓のように成果が出るまで時間が掛かるようなことをすると評価が下がる)
 良い物を仕入れたいと考えているのに目利きが出来るような人が居ない・研修が無いなどの場合も同様です。

 「人事戦略は、モノ・カネ・情報等の戦略を下支えする戦略だ」と位置づけておくと判りやすくなると思います。

  モノ・カネ・情報の各戦略を上手く回すために人が居る、という考え方ですね。

 

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経営戦略の中の人事制度の位置づけ



次回は人事制度の全体像について解説します。

従業員満足度を追いかけるのは平成でもう終わり! 事業目標を達成するための人事制度の作り方セミナー

 年末年始に人事制度の作り方を整理していたらこんな感じのスライド80枚に及ぶ膨大な資料が完成しました。

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人事制度の作り方セミナー 概要

 折角なら、「事業目標を達成するための人事制度の作り方セミナー」と題してやってしまえばいいんじゃないかと思ったので、連載していくことにします。

 過去記事でも記載していますが、僕が人事制度を作る上でのコンセプトは「事業目標を達成するための人事制度を作る」ということです。決して人を切り捨てるということをベースにしているわけではないですし、僕のベースにある思想は選抜ではなくて育成ですが、従業員満足度を志向すると意図しないところで問題が出るからです。なので、「従業員の皆さんにご納得いただける制度を作らなければならない!」とか本気で思っている人はこのセミナーの対象外になります。(建前と割り切って使っていきましょう)

 

 資料は完成していますので、業界団体の方々からお声をいただければ出張講演も致しますセミナーを行なう場合は、時事問題(働き方改革や人手不足問題など)や、業界・職種の課題に関連付けることも可能です。

 

 概要は以下の通りです。順次公開していきます。このページを表紙にして、公開の都度追記していきます。

 

 

1.セミナーのゴールと進め方
人事戦略の位置づけ
人事制度とは何か
良い人事制度とは?
悪い人事制度はあるのか?
本セミナーで紹介する人事制度を作ることで起きるメリット
本セミナーの進め方とゴール


2.あるべき姿の設計方法
人事制度を設計するために考慮すべき要素
事業目標達成の為に必要な人材は?
求める人物像の設計方法の2パターン
求める人物像設計のポイント


3.現状分析
現状分析方法
従業員動態分析
給与カーブ分析
参考:給与カーブ分析(多項式近似曲線から判ること)
従業員へのアンケート調査


4.あるべき姿と現状のギャップを埋める
ギャップを埋めるために施策を考える
事業目標数値を分解して考える
人事制度改定を含めた人事施策の方向性を決定する。
人事制度改定の実行計画を作成する


5.等級制度
等級の基本方針を設計する
複線型等級
昇格ルール設計
降格ルール設計
ハイブリッド等級という考え方


6.報酬制度
報酬制度の設計は評価制度と同時に行なう。
報酬制度設計時に抑えておくべき観点
“基本給”ではなく支給名目を明示する。
等級毎の給与をどう設計するか
管理職⇔一般社員層の給与レンジ差の設計
昇給方法の設計
手当の設計
賞与の設計
業績に応じて追加・抑制出来る賞与の設計事例


7.評価制度
評価基準設計評価段階の設計
評価段階の設計
目標管理の設計


8.全体の整合性確認
グランドデザインとの整合性を確認
理論モデルで新制度をシミュレーション
新制度を現状と比較し、実現可能性を検討
調整給を使って移行を促進する。


9.制度の運用と他制度への展開
浸透のための計画
採用計画との連動
教育制度との連動